にもかかわらず、日経世論調査アーカイブによると、今回のサラリーマン増税案に対して賛成が55%(反対30%)と過半数を占めたという(2017年12月調査)。賛成と答えた人がどういう理由でそう判断したかはわからないが、今回の所得税増税の対象者は、前述したように約230万人で、給与所得者の4%だという。つまり、増税の対象から外れた96%の給与所得者の半数以上が増税に賛成していることになるわけで、これは究極のポピュリズム(大衆迎合)だ。今回、増税の不幸に遭わなかった人たちが他人の不幸を喜ぶ、という実に歪な構図である。
私はこれまでに「資産家や金持ちが妬まれたり、憎まれたり、批判されたりする風土は最悪だと思う。実際、今はそうした空気が国内にあるから、彼らは海外へ逃避して財産を隠しているのだ」と指摘したが、今後も国内に居づらくなった金持ちが海外に出ていけば、さらに国は貧しくなるし、若者に「坂の上の雲」を目指すアンビション(大志)も育たない。富裕層を妬んだり憎んだりする負け犬根性の風潮が広がると、日本は狭量で嫌な社会になってしまう。
※週刊ポスト2018年2月2日号