女性セブンの名物記者“オバ記者”こと野原広子が、還暦にして経験した客室清掃のアルバイト。最終日を迎え、その感想を語った。
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12年ぶりにホテルの客室清掃のバイトを始めたら、先輩は中国、韓国、ミャンマー、ベトナム、フィリピンにネパールとアジア諸国のおばちゃんたち。部屋の掃除という家事に近い仕事のせいか、お国柄というより、“私のやり方”が前に出てね。「あのやり方はおかしい」と、バックヤードは嫁姑の小競り合いのよう。
とはいえ、決められた時間に決められた部屋数をキレイにしなければならない身。
「ここ、ダメ」「すみません」「こっち、キレイにして」「ごめんなさい」
多国籍の先輩たちに怒られたところで、せいぜいストレートパンチ。毒が回らないんだよ。だけど日本人同士の“空気”の押し合いはそうはいかないよ。
無言で、でもはっきりと「あんた、嫌い」と言う人
“元美人”のTさんは、濃いファンデーションに青いシャドーで、60代半ばに見せているけど、もしかして70代前半?という人。掃除が終わった後、アメニティーはどこで補充するのか聞くと、「そこのリネン室よ~ぅ」と歌うように教えてくれ、第一印象は「とってもいい人」だったの。
ところが20才前後の韓流イケメンくんとTさんと3人でエレベーターに乗ったときのこと。その日、私はTさんの部下に配置されたので、「よろしくお願いします」とふたりに挨拶をしたわけ。
イケメンくんがチラッと私を見て何か言おうとした瞬間、「1101室、お願いできるかしらぁ~」。Tさんが甘~い声でイケメンくんに話しかけたんだわ。
ふたりの話が途切れたところで、「まだ1週間目なので、どうぞよろしく」。もう一度、Tさんに仁義をきると、今度はあからさまに聞こえないふり。口の筋肉を1ミリも動かさずに、「あんた、嫌い」と言われちゃった。