待ったなし、ごまかしなしのガチンコ労働
それだけじゃない。疲れがたまる後半になって、必死に掃除機をかけていると、出入り口に人の気配がする。なんとTさんが腕組みして私をニラんでるんだわ。
「あっ、掃除機、使いますか?」とスイッチを切って聞くと、「使うわよッ」。
ただごとではない口調に、まだ部屋の半分しか終わっていなかったけどコンセントを抜いて差し出すと、ひったくるようにして「自分で使う掃除機は、自分で持ってきてッ」とぴしゃり。
「どこに置いてあるか知らされていなかったから、廊下に出ていたのを使ったんだよ」
そう言いたいのをグッとこらえて、「すみません」と謝ると、Tさんは私をギロリと睨んだだけで、「うん」とも「すん」とも。「いろんな人がいるよ。気にしない」と自分に言い聞かせても、士気は落ちるって。
最後は疲れすぎて自分が何をしているのかわからない状態。Tさんの「まぁ~だ~」と呆れたような声を聞いたら「わああ」と叫び出しそうだったわ。
よほどTさんと私は相性が悪かったのねと、今なら思えるけど、その日は「若い男にはくねくねするくせにさぁ」と居酒屋で、友人相手にTさんの悪口が止まらない。
とはいっても、翌日の待ったなし、ごまかしなしのガチンコ労働を思うと生ビールとレモンハイ各1杯で終了。思わず「お勘定!」と叫んじゃうのよ。
そうこうするうちに最終日。なんと責任者のWさん(男性・60代)が朝礼で私がその日限りで去ることをみんなに伝え、「短期間でしたが頑張って私たちの役に立ってくれました」と言ってくれたの。
“役に立った”なんて人から言われたのはいつ以来よ。この一言で、私はこの体でこれからもやっていけるという自信がむくむくと。これはカンレキの私がいちばん欲しかったものだった気がする。
さあ、次はどこへ行こうかな。
※女性セブン2018年2月8日号