60歳の夫が継続雇用で年収350万円、妻は5歳年上の専業主婦というケースを考えてみよう。総務省の「家計調査報告書」(2016年)によると、定年後の夫婦に必要な毎月の生活費はおよそ27万円。夫の年収350万円(月収約29万円)で賄える。
「専業主婦の妻が65歳から月額約6万円の基礎年金を受給可能な状況だとして、夫の継続雇用が続く5年間は生活に余裕があるから無理なく繰り下げできる。妻が70歳(夫が65歳)からの受給を選択すれば、妻の年金は42%増えて、月額約2万5000円のプラスとなるのです」(北村氏)
繰り下げ受給は長生きするほど「得」になる。70歳受給開始を選んだ場合、「81歳10か月」より長生きすると、65歳受給開始を選んだ時より受給総額が多くなる。平均寿命は男性81歳、女性87歳なので、「妻の繰り下げ」のほうが得できる可能性が高い。
年下妻なら“年金の家族手当”がもらえる
妻が年下の場合、知っておきたいのが「加給年金」だ。
「加給年金とは、厚生年金への加入期間が20年以上ある夫が65歳になった時、年下の妻がいれば『年額38万9800円』が夫の年金に上乗せされる制度のこと。言わば年金の“家族手当”です」(北村氏)
加給年金は妻が65歳になるまで加算され続ける。そのため年下妻との年齢差が大きいほど、もらえる期間が長くなる。
注意したいのは、夫が「繰り下げ」を選んでしまうと、その間は加給年金がもらえず、繰り下げても加給年金は増えない点だ。
「平均寿命の年齢で亡くなると仮定した場合、夫の年金受給を70歳まで繰り下げるよりも、加給年金を3年間もらったほうが受給総額は多くなる。つまり、3歳以上年下の妻がいる場合は、『夫の繰り下げは損』という考え方になります」(北村氏)
※週刊ポスト2018年2月9日号