今国会で38年ぶりとなる相続制度(民法)の大改正が行なわれ、これに伴い、夫と妻の間で不動産や預貯金といった「資産」をどう配分しておくべきかの“常識”が大きく変わろうとしている。
改正案では「自宅の生前贈与」に変化が起きる。税理士法人チェスター代表の福留正明氏がいう。
「現行法上は夫が妻に自宅を生前贈与しても、遺言などで『自宅は遺産に含まない』といった特別の意思表示をしない限り、自宅は遺産分割の対象になっていた。それが今回の制度改正で、結婚して20年以上の夫婦であれば、意思表示がなくとも遺産分割の対象から除外されることになる」
自宅を「妻の財産」に変えることも容易になるのだ。生前贈与せずとも、「居住権」が認められるようになれば、妻が自宅を追われる心配は少なくなる。ただ、「金融資産を子供より妻に多く残したい人にとっては、自宅の生前贈与にもメリットがある」(同前)という。
例えば、
■自宅/資産評価額3000万円
■金融資産/5000万円
を夫が残すケース。現行法では妻の法定相続分は、3000万円の自宅と金融資産1000万円となる。
それが、自宅を妻に生前贈与しておけば、相続時に分割対象となる遺産は「金融資産5000万円」だけになるので、妻は3000万円の自宅に加え、金融資産2500万円を受け取れるようになるのだ。
※週刊ポスト2018年2月9日号