今国会で38年ぶりとなる相続制度(民法)の大改正が行なわれるが、これに伴い、夫と妻の間で不動産や預貯金といった「資産」をどう配分しておくべきかの“常識”が大きく変わろうとしている。
妻に財産を残す場合、「最高1億6000万円までの配偶者控除という大きな優遇措置が用意されている」(税理士法人チェスター代表の福留正明氏)ため、遺言書に明記するなどの手続きを踏めば、夫の死後、「妻に財産のすべてを無税で相続させる」ことが可能な人がほとんどになる。
だが、専門家は「家族全体の税負担を考えると必ずしも有利な選択とは言えない」(同前)と注意を促す。
それは「夫から妻への相続(一次相続)」の先に、「妻から子への相続(二次相続)」が待っているからだ。
「『夫から妻と子供へ』『妻から子供へ』という2回に分けて親世代の資産を子に相続させれば、基礎控除(『3000万円+600万円×法定相続人の数』までは相続税がかからない)枠を2回活用できるが、妻が配偶者控除をフルに使って夫の財産をすべて相続してしまうと、子供たちが使える控除枠が少なくなり、結果、子供たちの相続税負担が大きくなる可能性がある」(同前)
財産を「妻に渡し過ぎるリスク」も、考えておく必要があるということだ。前出・福留氏は、「今回の法改正で、妻に手厚く遺産を残しやすい時代になる。だからこそ、子供の相続税負担がどうなるか、専門家の協力を得てシミュレーションをしておくことも大切になるだろう」と指摘した。
※週刊ポスト2018年2月9日号