撮影会は、同社のイベントとしては記録的な動員を呼び、全国から5000名以上のファンが集まったのだとか。石井さんの撮りたいものは、本当に「みんなも撮りたいもの」だったのである。石井さんの“才能”は、グッズ展開にも活かされた。
「海老名駅にグッズショップを作った時は、子供たちに楽しんでもらおうと思い、廃車を活用して本物とまったく同じ運転台をお店に置きました。子供たちはガッチャンガッチャンやって大喜び。それを見て私も嬉しかったですね。
相鉄車両のプラレールを作った時は、車両課に協力してもらって、図面を出してもらうところからスタートし、できあがった写真もチェックして、寸分違わぬ出来になっているかなと“マニア目線”で確認しました。やはり見る人が見たら分かりますから。
今はもうなくなってしまった車両を作る時は、図面から作るしか方法がありません。ですから昔の図面を借りてきて、そこから寸法を確認して、それを縮小して、といった作業が必要になります。試作品ができても、『ちょっと色が違うんじゃない?』『ちょっと色が薄いんじゃない?』と、こだわりました。お客様もこだわるから、我々もこだわります。『我々は鉄道マニアの代表です!』ぐらいに思っていますから(笑)」
そんな石井さんは、鉄道ファンの気持ちが分かるがゆえに、鉄道ファンとは自らコミュニケーションを取るようにしているという。
「自分が鉄道好きになったきっかけがきっかけですから、子供を見かけた時には積極的にコミュニケーションを取るようにしています。終点で運転席を覗き込んでいる子がいたら、ホームで声をかけたり、帽子をかぶせてあげたりしています。
また、自分が鉄道写真の撮影が趣味である上に運転士の経験もあるので分かるのですが、どこかに撮影に行った際に撮り鉄さんを見ると、『あれは線路に近寄り過ぎだな』という人を見かけることがあります。そういう時には、『近すぎるよ』と単に注意するだけではなく、『こっちの方がいいよ』と教えてあげるようにしています」