「65歳になって年金請求書を受け取ってから考えるのでは、よほど裕福な世帯以外は間に合いません。遅くとも定年退職を迎える60歳で、貯蓄額や定年後の継続雇用や再雇用の給与水準、いつまで働くのかを具体的に検討しなければなりません。“得する制度”である年金の繰り下げを選んでいる人は現在、わずか2%程度。準備がなく、“なんとなく65歳から”にしている人が多いということです」(稲毛氏)
「70歳繰り下げ」のためには、年金を受け取れなくなる65歳から70歳までの「空白の5年間」を凌ぐ必要が出てくる。本来、その5年間でもらえたはずの年金は前述の標準モデルに基づけば「1320万円」。その分を埋め合わせる対策を講じなければならない。稲毛氏が続ける。
「妻のパートの稼ぎで不足分を埋めるのが有力な選択肢になる。1320万円というと途方もない額に思えるかもしれないが、夫の60歳定年時に妻がパートに出て、年収200万のパートを65歳まで5年間続ければ、それで1000万円は賄えます」
そうすれば残りは300万円で、「生活費の見直しや、65歳以降のアルバイトで捻出するのは不可能ではない」(同前)水準になってくる。
もちろん、65歳以降働くことに不安を覚える人や、妻がすでにパートで稼いでいる人もいるだろう。
「そうした人は、1年だけでも繰り下げを目指してみてはどうか。66歳受給でも8.4%増の年金を終身でもらえます。この場合、65~66歳でもらえるはずだった年金1年分(264万円)を貯めておけばいいので、たとえば妻のパートを7年間、月3万円増やすというようなやり方で捻出できます」(稲毛氏)
定年時に家族で計画を練ることで70代の年金額は大きく変わる。
※週刊ポスト2018年2月16・23日号