そうして65歳から準備を進めた人と、何もしなかった人とではどのような違いがあるのか。
7500万円の資産を持つA氏が生前贈与せず77歳で亡くなった場合、氏の妻と2人の子供にかかる相続税の基礎控除(3000万円+600万円×法定相続人の数)は4800万円。A氏の遺産7500万円から基礎控除を引いた2700万円にかかる相続税は144万円となる。
一方、資産7500万円を持っていたB氏が65歳から妻と2人の子供に生前贈与を始め、9年かけて年間1人110万円ずつを贈与した場合、払う税金はゼロで贈与総額は2970万円になる。このケースではB氏が亡くなった際の遺産は4530万円に圧縮され、基礎控除を下回る。A氏と同じ77歳で他界しても、B氏の遺産には相続税がかからない。
両氏とも同額の資産と同じ数の法定相続人を持ち、さらに同じ年齢で亡くなったのに、65歳から生前贈与をしていたかどうかで「144万円」もの差がついたのだ。10年先を見越して“先手”を打つことが家族への贈り物になることもある。
※週刊ポスト2018年2月16・23日号