課税所得が330万円超695万円以下の場合も、所得税は総合課税を選択すると税率が10.21%、住民税で申告不要制度を選ぶと5%で合計15.21%になるので、源泉徴収の20%より有利だ。695万円超900万円以下では合計の税率が18.273%となり、わずかではあるが総合課税が有利となる。
結論としては、課税所得が900万円以下の人なら、所得税は総合課税、住民税は申告不要制度を選択すると、多くの場合で源泉徴収よりも税率を低くできる。課税所得900万円というのは年収でいうと1400万円は超えていることが多いので、一般的な年収の人はほぼこの制度の恩恵を受けられることになる。
国民健康保険料や保育料が高くならずに済む
株式の譲渡益については総合課税を選択することはできないが、申告不要制度か申告分離課税を選択することが可能だ。いずれも税率は同じで、損益通算や損失の繰越控除の申告をする際に申告分離課税を選択することになる。
ただし、自営業者や年金生活者など国民健康保険に加入している人が損益通算や損失の繰越控除の申告をする場合、これまで通りの確定申告をすると住民税も申告分離課税となり、国民健康保険料や保育料の算定基礎となる所得が上がって負担が増える恐れがあった。こうしたケースでも、今後は住民税のみ申告不要制度を選択することで、負担増を防ぐことが可能になる。
税務署への確定申告と市区町村への申告が必要に
源泉徴収以外の課税方法を選択するには、所得税の確定申告に加え、市区町村に住民税の申告書を別途提出する必要がある。住民税で申告不要制度を選択する場合でも申告書を提出するというのは矛盾しているように感じるが、所得税の確定申告をするだけでは住民税でも同じ課税制度を利用することにされてしまうので仕方がない。