親子関係はひとそれぞれだが、過去に「高校には行かせない。住み込みで中卒で働け」と父親に言われ、その通りにした経験を持つ女性セブンの名物還暦記者“オバ記者”こと野原広子さん。そんな彼女が、がんで亡くなった父親との最後の時間を語る。
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がんの終末期を迎えて入院している父親(83才)が、「少しだけど」と10万円くれた。週末ごとの見舞いの交通費と今後の経費のつもりらしい。その封筒を手に、すぐに従妹のA子(60才)に電話をした私。
彼女は父親のお気に入りで、昔から「A子」という名前を出すだけで、父は機嫌がよくなる。ちゃんと話せるうちに会わせてやりたい、と思ってね。
「いいよ。おじさんに会いたいし、私の車で行こうよ」
「じゃ、私はサンドイッチを作るよ。高速代、ガソリン代はオヤジ持ちだから心配しないでね」
こうして、A子の住む東京都下から、東京を取り囲むように走る高速道路、圏央道で茨城に急いだ。冬の空が抜けるように青いドライブ日和の中を。