人生最大の資産である我が家を売る――その判断が必要な局面としてまず挙げられるのは、「まとまった資金が手元に必要な時」だ。
たとえば、一時金や毎月の利用料を支払うことになる「老人ホーム入居」のタイミングである。介護アドバイザーの横井孝治氏は「施設入居から逆算すべき」と助言する。
「男性だと75歳くらいから歩行や自力の入浴が難しくなり始めます。この年齢が施設に入居するひとつの目安になります」
一般的に有料老人ホームの支払い方法は「入居一時金+月払い」と「完全月払い」の2パターンある。入居一時金はいわば“頭金”で、月額の利用料が安くなる。
「一時金が1000万円で月額20万円という標準的な施設の場合、入居から5年間経過すると完全月払い40万円の施設より支払総額が少なくなる。その後は毎年240万円の差が出るため、体の動く75歳の時に一時金方式で入居すれば、長生きするほど有利」(横井氏)
そのため、自宅を売却して入居一時金を捻出することが有力な選択肢となる。問題はその際の「我が家の捨て方」である。「老人ホームに入る時に売る」のか、「入居後に売る」のかだ。横井氏が続ける。
「住み慣れた我が家を手放すことに抵抗があるかもしれませんが、時間が経つほど資産価値は下がります。マンションも築20年を過ぎると資産価値は半分以下になるとされます。特に老人ホーム入居費で子供に負担をかけたくない場合、75歳の入居時点で売却できる状況を目指すのが望ましい」