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自宅の生前贈与と死後相続、節税効果が大きいのは?

「相続時精算課税」を利用する税制上のマイナスポイントはほかにもある。最も大きいのは、配偶者や子供、子供の配偶者などに生前贈与すると年間110万円まで非課税となる「暦年課税制度」の権利を失うことだ。ゆい会計事務所の西津陵史氏が指摘する。

「この制度を使って上限の110万円を9年間、子供に贈与すれば約1000万円が非課税になりますが、すでに『相続時精算課税制度』を利用していると、これが使えない。この1000万円を一括贈与すると、177万円の贈与税がかかります。相続税がかかるほどの多額の現金があるなら、この制度を利用したほうがいいでしょう」

 同様に「小規模宅地等の特例」という制度も使えなくなる。

「これは親が死んだ後に同居する子供が自宅を相続すれば、土地の評価額が8割減になる制度です。仮に1億円の土地を所有している場合、別居する子供が相続すると約1220万円の相続税がかかりますが、同居する子供にこの制度を利用すれば8割減となり、基礎控除が土地の評価額を上回って相続税がかからない。同居する子供がいる場合は、生前贈与ではなく、この特例を使ったほうが有利と言えます」(同前)

 相続時に揉めないため、生前の子供への贈与を考えている人も多いだろうが、メリットよりもデメリットが目立つ。不動産の譲り時は慎重に考える必要がありそうだ。

※週刊ポスト2018年3月2日号

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