7月の参院選を睨んで「円安政策」に揺らぎも
上にも下にも大きく動きにくい相場が予想される16年は、まさに投資家の手腕が問われる1では、あらかじめわかっているようなリスクは極力排除しておいた方が賢明といえる。筆頭が「米利上げ」だろう。
これまで続いてきた世界的な低金利下で、債券主体で運用する国内外の債券ファンドマネージャーは利回りが期待できない債券から、高配当が望めて価格変動リスクの小さい株式へと運用先をシフトさせた。その結果、従来は目立った値動きのなかった食品株や薬品株などディフェンシブ銘柄の一角が大きな上昇を見せてきた。しかし、利上げに伴って債券の利回りが上昇すれば、彼らが手を引くのは必至である。この先、上がりすぎたディフェンシブ銘柄には警戒感を持って臨むべきだろう。
また、利上げに伴うドル買いで円安進行が予想され、輸出関連の大企業にとっては追い風となるが、それは原材料や食料などの輸入品が高くなることにつながるため、消費者にとってはいいことずくめではない。そもそも安倍政権は大企業が潤えば、その利益が国民に広く行き渡り、景気回復につながるだろうと考えてきたが、現状ではそうなっていない。その辺りは政治家も敏感に察知しているようで、「円安誘導でインフレにすればすべてうまくいく」といった言い回しに懐疑的な見方が増えつつある。何よりアベノミクス「新3本の矢」(※注)でデフレ脱却というニュアンスがトーンダウンしているのが、その証左といえるだろう。
7月に実施される参院選まで睨むと、消費者の不満解消のためには、「むしろ円安よりも若干の円高にして、デフレ気味にしておいた方がいい」といった思惑が働いてもおかしくない。そうであるならば、インフレ目標を掲げる政策に追い込まれ、一部で人手不足が深刻化していた「デフレ関連銘柄」が復活する可能性も浮上してくる。低価格を武器にしてきたサイゼリヤ、しまむら、ニトリホールディングス、100円ショップのセリア、さらには「すき家」を展開するゼンショーホールディングスなどが再び注目されるシナリオも十分に考えられる。
さらに思いを巡らせると、ただでさえ中国経済の失速が横たわり、そこに円安抑制機運の高まりが加わる輸出ハイテク関連の大型株は要警戒といえる。円高圧力による収益悪化で株価下落も懸念されるだろう。それでも大型株に投資したいという人は、郵政グループ3社のような内需系の金融株などにしておいた方が無難かもしれない。