人生には“ターニングポイント”というものがある。都内に住む40代の男性・Aさんの場合、それはペットだった。30代で初めて犬を飼ったことで、Aさんの人生に大きな変化が起きたという。Aさんが振り返る。
「私は30歳で結婚し、妻も私も子どもを強く望みましたが、どうしても子どもに恵まれませんでした。そんなある日、近所にできたショッピングモールを散歩していると、ペットショップがあり、衝動的に犬を購入。いわば子ども代わりです。私は実家がマンションだったため、それまでペットを飼ったことがなかったのですが、いざ飼ってみると可愛くて仕方がありませんでした」
毎日愛犬と一緒に1時間以上散歩をするようになり、腹周りの贅肉がすっかりなくなったというAさん。そのエピソードだけでも溺愛ぶりが伺われるが、Aさんは次の行動に出る。
「可愛がっているうちに、『1匹じゃ寂しそうだな』と思うようになり、同じ種類の犬をもう1匹飼ったのです。私が飼っている犬はかなり大きくなる犬種だったのですが、そんなことよりも愛情が上回りました。また、旅行に行くために、それまでの2シーターのスポーツカーからワゴン車に買い替えました」
もともと車が大好きで、仕事も自動車関係だったAさん。かつて夜な夜な峠を攻めていた男性にスポーツカーを捨てさせるとは、犬の魅力も相当なものだ。しかし、それだけでは終わらない。Aさんはさらなる行動に出る。仕事を辞めてしまったのだ。
「前々から脱サラしたいとは思っていたのですが、『もっと犬と過ごしたい』という気持ちが高ぶり、会社を辞めて資格試験を受けることにしました。幸いなことに我が家は妻も働いていたので、妻は『良いんじゃない?』と言ってくれました。結果的に3年かかりましたが、目指す資格が取れ、今は個人事務所を作って働いています」