世界的な半導体市況でこれまで苦戦を強いられてきた「日の丸半導体メーカー」に追い風が吹き始めている。グローバルリンクアドバイザーズ代表の戸松信博氏は、構造改革で赤字体質から脱皮して新たな成長が期待できる「日の丸半導体」銘柄のひとつとして、「ルネサスエレクトロニクス」(東証1部・6723)に注目している。
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日立製作所、三菱電機、NECの3社の非メモリ半導体部門を母体とする半導体メーカーであるルネサスエレクトロニクスは、電気機器の制御に欠かせないマイコンを主力とし、なかでも車載用マイコンでは世界トップクラス。自動車業界でEV(電気自動車)やPHV(プラグインハイブリッド)車、自動運転技術などへのパラダイムシフトが進むなかで、新たな成長フェーズを迎えています。
2010年の設立以来の赤字体質に、円高や東日本大震災など外部環境の逆風も加わって経営危機に直面してきましたが、2013年に産業革新機構やトヨタ自動車、日産自動車、パナソニックなど9社を割当先とする第三者割当増資によって資金を調達。大規模リストラや生産拠点再編など抜本的構造改革がようやく実を結び、2015年3月期から黒字化に漕ぎ着けています。
特に事業構造の改革では、車載用と産業用に注力したことで、IoT(モノのインターネット)の台頭や自動運転、自動車のIT化など産業構造の大変革にマッチする事業ポートフォリオになったと思います。
足元の業績は好調で、2017年に買収した米半導体メーカーとの統合効果が寄与しています。2月9日に発表された2017年12月期決算は、前期に決算期が変更されたため、単純比較はできませんが、大幅な増収増益となりました。今後も事業統合による技術の相互応用や販路の相互活用など、事業基盤の拡大と利益効率の向上が期待できると見ています。
さらに、この統合効果は新たに掲げられた中期成長戦略「2020年頃に粗利益率50%、営業利益率20%」の達成の足がかりになるでしょう。
自動車のIT化や自動運転技術の進展、工場の自動化などを含めたIoTの進展を背景に、さまざまな業界で半導体需要が増大していくなか、構造改革の成果が表れてきたという状況にあって、見通しは明るいです。とりわけ車載用半導体市場の拡大を追い風とした成長に大きな期待が持てると思います。