福利厚生でも差が出る
“年金博士”こと社会保険労務士の北村庄吾氏が指摘する。
「勤続35年の標準的サラリーマンの厚生年金加入期間が再雇用で5年間延びると、65歳からもらえる毎月の年金受給額は2万1000円ほど増えます。非正規の転職の道を選んだ人と給料は同じでも、65歳から85歳までの20年間を考えると生涯年金額に372万円の差がつく。さらに健康保険の保険料も会社が半分を負担する企業の健保組合は、国民健康保険料の半額ほど。この負担も毎月数千円違ってきます。健保組合には人間ドックが無料になるなど福利厚生面でも大きな差があることが多い」
「次は新天地で働きたい」と考えていたとしても、Aさんのようにスカウトの声がかかるならまだ恵まれている。現実には、会社の再雇用を断わってはみたものの、なかなか希望の職種や賃金の正社員の仕事はみつからず、やむなく不本意な非正規の仕事に就くしかなかったというケースは多い。
現在、企業は社員が希望すれば65歳までの雇用を義務づけられている。60歳以降も会社で働くのはサラリーマンの“権利”なのだ。それでも再就職を選択するなら、転職先に経済的メリットを投げ打つだけの魅力があるかを冷静に見極める必要がある。
※週刊ポスト2018年3月16日号