今や個人投資家に大人気の株主優待。なんらかの優待制度を実施する企業の数は1100を超え、過去最高を記録したとの報道が話題になった。魅力的な優待を取り入れれば個人投資家の注目を集め、NISA(少額投資非課税制度)口座で長期保有してもらえる期待もあり、企業は優待の新設や拡充に積極的だ。
その一方で、業績不振でやむを得ず優待を廃止したり、中止に追い込まれるケースもある。また、小口株主の優遇となる株主優待は公平性に欠けるとして、あえて廃止し配当を増やす企業もある。
こうした優待の新設や変更は、株価にも大きな影響を及ぼす。たとえば、さまざまな飲食店で利用できる食事券の優待で人気のクリエイト・レストランツ・ホールディングス(しゃぶしゃぶ・日本料理「吉祥」ブランドなどを運営)が、株式分割に合わせた優待の大幅拡充を7月末に発表した。優待を得るのに必要な資金額が3分の1になるうえ、既存の最低単元の株主の優待額が倍になるという大盤振る舞いに、株価は一時40%超も急騰した。
時期を同じくして、「おこめ券銘柄」として人気だった荏原実業が、配当を12.5%増やす代わりに優待廃止を発表すると、翌日の株価は大きく窓を開けて一時4%も下落している。優待の変更は株価を大きく動かす要因になっているのだ。
■文/森田悦子(ファイナンシャルプランナー、ライター)
※マネーポスト2014年秋号