シンガポールに住むファイナンシャル・プランナーの花輪陽子氏は、時折、現地の富裕層のパーティーやランチ会などに呼ばれることがあるという。そこで繰り広げられるのは、女性同士のマウンティングだ。国際色豊かなシンガポールでの「マウンティング合戦」の実情を花輪氏がリポートする。
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高級ランチを楽しみながら、「夫がメルセデスのマイバッハを買ったんだけど、大きくて駐車するのがちょっと大変ね~」「それは慣れてないからじゃない? うちはGクラスで大きいけど、慣れてるから平気よ~」なんて会話でボコボコに殴り合う。少しでも隙があると、買ったものや住んでいる場所、夫の仕事の自慢話を入れる。女同士のマウンティングが日本で話題になっていますが、私の住むシンガポールの富裕層女性たちの間でも、同じようなことが繰り広げられています。
実際にあったイギリス系の富裕層ママが集まるランチ会でのことです。当日のメンバーには中華系の女性もいました。高級ランチとおしゃべりを楽しんでいたのですが、突然、2人の女性が身につけていたダイヤモンドのピアスの話になったのです。2人はとてもよく似たピアスをしていました。
イギリス系ママが中華系ママに「あなたのそのダイヤ、何カラット?」と質問しはじめました。「どこで買ったの?」「ブランドは?」と立て続けに聞くイギリス系ママ。
中華系ママがしていたダイヤモンドのほうが、見た目は大きく見えました。しかし、彼女のアクセサリーはブランドの正規店で購入した商品ではなく、比較的安く買える宝石専門店の商品を、加工技術がある会社に発注して作ったものでした。それを見抜いたイギリス系のママが噛み付いたのです。
「私は正規店でしか買わないわ」──。
その場が凍り付きそうなセリフです。しかし、その場にいたママたちは高笑いを始めました。中華系のママの目には涙が浮かんでいました。