「血液検査だけで簡単に分かるから受けてください、という妻の言葉がなければ、今頃は死んでしまって、この取材を受けることもなかったと思います」
こう語るのは、熱帯医学などが専門の群馬大学・元学長の鈴木守医師。自らの研究に加え、公的な役職を歴任する多忙な日々のため、年1回のがん検診すら受けられずにいた。そんな様子を見かねて、2011年に同じく医師でもある妻が強く勧めたのが『ABC検診(胃がんリスク層別化検査)』だった。
胃がんの主原因であるピロリ菌の感染有無と、胃粘膜の萎縮度を組み合わせ、リスクを4段階のグループに判定するもので、僅かな血液だけで検査が可能だ。費用も500円(※群馬県高崎市の場合)で済む。
受診者はリスクに応じて、内視鏡検査や、ピロリ菌の除菌治療を行なう。
「採血だけで済むというので、気軽な気持ちで受けました。すると、ピロリ菌に感染して、なおかつ胃粘膜の萎縮が進行していたことが判りました。最もリスクが高いグループですから、迷わず内視鏡検査を受けましたよ」(鈴木守医師)
内視鏡のスペシャリストである乾正幸医師(乾内科クリニック・高崎市)の精密検査で、鈴木医師に早期の胃がんが発見された。悪性度の高いタイプだったことから、間を置かずに外科手術を受け、胃の噴門部(食道と胃の繋ぎ目)付近を切除したという。
「早期発見のありがたさは、しみじみ感じました。半月休んだだけで、大学の仕事に復帰できましたから。胃を一部取ったせいで、冷や汗、下痢が続いて、体重も15kg落ちましたが、体調は良くなりましたね」(同前)