現在の世界各国の仮想通貨に関する姿勢は、決して一様ではない。規制強化に動く国がある一方で、ICO(イニシャル・コイン・オファリング=仮想通貨発行による資金調達手法)が世界的な関心を集めている。フィスコデジタルアセットグループ代表取締役でビットコインアナリストの田代昌之氏が、仮想通貨をめぐる海外の最新事情を解説する。
* * *
2018年3月20日、アルゼンチンのブエノスアイレスで開かれていた20か国・地域(G20)の財務相・中央銀行総裁会議は、仮想通貨についてマネーロンダリング対策を確実に進めることなどを盛り込んだ共同声明を採択した。共同声明には、「消費者保護、市場の健全性、脱税、テロ資金供与などに関する問題を提起する」など、仮想通貨の負の側面が列挙された。また、仮想通貨交換業者への免許・登録制の導入や顧客の本人確認の徹底などの規制強化でも一致を見た。
G20財務省・中央銀行総裁会議が仮想通貨を議題に載せたのは今回が初めてだったが、仮想通貨に対する各国の規制の動きは、2017年から顕著になっている。
たとえば、2017年9月に中国の規制当局が仮想通貨取引所に対して人民元建ての仮想通貨取引サービスの停止を通知。それを受けて、中国の大半の取引所が取引の停止を決定したことは、仮想通貨市場を大きく揺るがす結果を招いた。
韓国では2018年1月、法務部が仮想通貨取引所の全面的な閉鎖につながる法律の設定に動いていると一部メディアが報じた。ただし、仮想通貨価格の下落や投資家の反対を受け、全面的な取引禁止ではなく、市場の安全管理へと方針を変えたと見られている。
欧州では、フランスやドイツの中央銀行の高官等が、変動の激しさを理由に仮想通貨に関する取り締まりを訴えている。欧州中央銀行(ECB)のドラギ総裁も、「ビットコインは通貨ではなく、変動幅が大き過ぎてリスクが高く、法的保護もない」と否定的な見解を述べている。