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“消された年金” 機構は委託先の杜撰さ把握するも放置していた

日本年金機構は委託先の杜撰さを把握していた(写真:時事通信フォト)

 2007年、第1次安倍政権を崩壊させた最大の原因が「消えた年金問題」だった。旧・社会保険庁の杜撰な管理によって、約5000万件の年金記録が“宙に浮いている”ことが明らかになると、安倍首相は、「最後のお1人に至るまで記録をチェックして、正しくお支払いしていく」と大見得を切った。ところが、参院選で惨敗すると、早々に政権を投げ出した。今も、約2000万件の年金記録が消されたままの状態にある。

 今回の消された年金問題の発端は、毎年8月末~9月上旬にかけて機構から年金受給者に送られてくる「扶養親族等申告書」だった。この申告書に配偶者など扶養親族の所得情報を書き込んで返送すると、年金から源泉徴収される所得税の控除が受けられる。

 3月初旬の第一報の時点では、“申告書の書き方を間違える受給者がたくさんいたので、2月分の年金で130万人に過少支給が発生した”という話になっていた。

 ところが、である。3月20日になって、日本年金機構は会見を開く。そこで、申告書のデータ入力を委託した情報処理会社「SAY企画」が入力ミスを重ねたため、申告書を適切に提出したにもかかわらず、その内容が正しく2月の支給額に反映されなかった人がいると明らかにしたのだ。

 入力ミスなどによって年金を減らされていたのは約10万4000人。その総額は約20億円に及んだ。

 日本年金機構の前身は悪名高い社会保険庁だ。年金記録の杜撰な管理によって約5000万件もの年金記録が誰のものかわからなくなった「消えた年金問題」だけでなく、国民年金保険料の納付率を高く見せかけるための「不正免除問題」や、国民の払った保険料を無駄な箱モノなどに注ぎ込む「年金流用問題」など、不祥事が相次いだことを受け、社会保険庁は2010年に解体。その業務は日本年金機構に移管された。

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