4月1日より薬価基準が改定され、処方薬がこれまでより1~2割安くなっている。薬の値段は通常2年ごとに次第に安くなっていく仕組みだが、今回、263品目の薬が一斉に安くなった。
なぜこのような改定がされたかというと、製薬会社の利益を保護するための「新薬創出加算」という制度が見直されたからだ。
新薬創出加算とは、厚生労働省が製薬会社に革新的な新薬の創出を促すインセンティブとして、本来なら値下がりしていく薬価を維持する仕組みだ。ここで言う新薬とは発売から15年以内のものを指す。
商品の値段が下がることで利益が出にくくなる製薬会社にとっては、当然、痛手となる。
製薬会社の加盟団体である日本製薬工業協会は、公式発表で「多くの企業において加算の対象品目が大幅に絞り込まれるとともに、当該品目の薬価が維持されない仕組みであり、企業の新薬開発意欲を著しく損ねる」とコメントし、強く反発している。東京大学大学院薬学研究科医薬政策学特任准教授の五十嵐中氏はこう言う。
「薬価は定期的に段階を踏んで下がっていくのが通常でした。薬を開発し、『新薬創出加算の対象となればしばらくは安泰』だったが、ルールが突然変更したために想定していた利益が得られなくなった。製薬会社にとって今回の改定のダメージは大きい」
そもそもこれまで薬の値段は、ほとんど製薬会社の“言い値”で決められてきた。
「原価計算方式」といって、企業がその薬にかかった研究開発費や製造原価、さらに医者や薬剤師への宣伝費用まで含めた販売管理費などをトータルで算出して申告し、厚労省が市場規模を勘案して薬価を決める。「実際にはほとんど申告通り」(製薬会社社員)だという。