その上、「新薬創出加算」で値下げも食い止められていたわけだ。医療経済ジャーナリストの室井一辰氏が解説する。
「新薬創出加算はもともと製薬会社側が利益確保のために要請してできた制度です。たとえ類似の効果のある薬があっても革新的な効果が認められれば『新薬』として創出加算の対象となるなど、これまではハードルが低かったため、薬価が下がりにくい状況でした。厚労省が、薬価の高止まりを容認している状況だったのです」
状況が一変したのは、高齢化に伴う医療費の増大に、いよいよ国の財政が耐えきれなくなったことだ。
政府は平成30年度の予算編成で医療費をはじめとする社会保障費の自然増を1300億円削減する方針を示し、財務省は「画期性や有用性の高さが認められなくとも新薬創出加算の対象になるため問題が多い」と指摘、一気に廃止を求めた。それに対し製薬業界が猛反発し、条件を厳格化して制度を残すという妥協案で着地したという経緯がある。前出・室井氏はこう語る。
「今後も医療費を圧縮する流れは変わらないでしょう。製薬会社のせめぎ合い如何で、ますます薬価は下がっていくことになると思います」
※週刊ポスト2018年4月13日号