長男(22才)を都心の有名私立大学に通わせるAさん(50才 パート主婦)は、4年生となったこの4月から就職活動を本格化させたわが子を前に、期待と不安が隠せないでいる。
「志望業界を聞いたら、印刷業界だと言うんです。出版不況といわれている中で、なぜその業界を目指すのか…。親心としては、少しでも安泰な企業に入ってほしいですから。でも、息子は『お母さん、わかってないなぁ』と言うんです。今、私が知っている時代とは企業を取り巻く状況がまったく違うみたい」
3月28日、就職情報会社の『学情』が、2019年3月卒業予定の大学生・大学院生を対象にした「就職人気企業ランキング」を発表した。
上位100位を見ると、ANA(全日本空輸)とJAL(日本航空)という2大航空会社がトップ3に入り、食品会社も大人気。印刷、出版業界の企業が昨年比で軒並みランクアップする一方、メガバンク、テレビ、広告代理店が大幅にダウンするという結果になった。学情が運営する就活サイト『あさがくナビ』編集長の乾真一朗氏が語る。
「ここ数年、航空と食品はずっと人気が高いんです。航空人気は学生の間で強まるグローバル志向の影響で、食品はCMなどで常になじみ深い存在であることが大きい。味の素、ロッテ、グリコと、みんな身近でしょう。商品も知ってるし、仕事がイメージしやすいんです」
不況が叫ばれる出版、印刷が伸びたのは「コンテンツビジネス」に学生の興味が移っている証だという。
「漫画アプリや電子書籍など、出版社のデジタル展開に学生の興味が集中しています。編集よりもネット部署の志望者が増えている印象です。印刷会社も、近年は紙ではなく『VR』(仮想現実)や『AR』(拡張現実)の先端技術に力を入れており、就活イベントでも学生にこの点をうまくアピールしていました」(乾氏)