投資信託市場では外国株式の低迷もあって日本株ファンド、それもインデックス型への注目が高まっているという。投信の最新動向について、楽天証券経済研究所ファンドアナリストの篠田尚子氏が解説する。
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2015年の8月下旬に起きた「中国ショック」以降、金融市場は大きく乱高下したが、個人投資家の資産運用への意欲は衰えず、国内の投資信託市場には順調な資金流入が続いている。
投資信託市場への流入額から流出額を差し引いた純流入額は、8月9194億円、9月7190億円、10月2978億円となり、2014年12月以降、11か月連続でプラスとなった。また、10月は金融市場も落ち着き、内外の主要な株式市場が値を戻したことで、投資信託市場の残高も大幅に増加。10月末の時点で、64兆5000億円と前月から3兆6000億円増加した。
ただし、個別のファンドを見ると、激しい資金流出に見舞われているファンドもある。特に、残高を減らしているのが、高水準の分配金を出していた毎月分配型ファンドだ。高い分配金の源泉となっていた、新興国の株式や債券、REIT(不動産投資信託)での運用収益が、中国ショックによって大きく悪化したのだ。
2015年に入って、新興国通貨は、不安定な動きを続け、中国ショックによって大きく下落した。同時に、新興国からの投資マネーの流出が本格化し、投資対象となっていた金融商品の価格が急落したことで、毎月分配型ファンドの基準価額は下がり、分配金の引き下げも相次いだのである。
また、ここ1~2年ほど好調だった、ファンドラップの人気も離散してきた。ファンドラップとは、金融機関が、あらかじめ投資家の運用目的やリスク許容度を聞き、それに基づいて資産配分や金融商品の選択をし、購入までをおこなう金融サービスである。投資家にとっては、プロに資産運用を任せることで、運用に関わる手間を省けるというメリットがあるため、初めて資産運用をするといった層からの資金が流入していた。
ただし、ファンドラップで実際に投資の対象となるのは、証券会社が提供する専用のファンド。投資環境が悪化したこともあるが、既存のファンドと比較しても目立った運用成績を挙げたものは少なく、結局手数料の分だけ不利になった、といったケースが多かった模様。ファンドラップの顧客層からの資金流入が一巡したことも、伸び悩みの要因となっている。
代わって、投資家からの資金が流入しているのがインデックスファンドだ。インデックスファンドとは、日経平均株価や東証株価指数(TOPIX)といった指数に値動きが連動するファンドのこと。株式だけでなく、債券やREITの指数に連動するインデックスファンドもある。
通常、金融市場が不安定なときは、インデックスファンドよりもアクティブファンドが選好される傾向がある。アクティブファンドは、運用スタイルにおいてインデックスファンドとは対照的で、運用を担当するファンドマネージャーが、状況に応じて投資対象を機動的に入れ替えることができるからだ。
中国ショックが尾を引く中、それにもかかわらず、インデックスファンドが注目されているのは、インデックスファンドの商品性が大きく改善しているためである。
まず、従来よりも運用コストを引き下げたインデックスファンドが登場している。例えば、9月より一般販売が開始された、「三井住友・日本債券インデックスファンド」(三井住友アセットマネジメント)は、信託報酬が0.1728%(税込。以下同)と、既存の同じカテゴリーのファンドの約3分の1程度となっている。この水準は、同カテゴリーの上場投資信託(ETF)の信託報酬をも下回るものだ。
運用会社の三井住友アセットマネジメントからは、他にも3本のファンドが同時期に一般販売されているが、いずれも最低水準の信託報酬を実現。もともと、確定拠出年金(DC)向けとして販売・運用されていたため、新しくファンドを組成するよりも、運用側の費用が割安となる点を活かしている。
DC向けファンドを一般販売するケースは、以前からあり、低い信託報酬が魅力だった。それが、ここにきて、さらに引き下げられた格好だ。コストはファンドのパフォーマンスに直結するだけに、こうしたファンドが増えていくことを期待したい。
また、ニッセイアセットマネジメントには、「購入・換金手数料なしシリーズ」というインデックスファンドのシリーズがある。購入時の販売手数料が無料の「ノーロード型」と呼ばれるファンドは多いが、換金手数料も無料となるファンドは珍しい。2015年に入ってから、JPX日経400に連動するタイプや、バランス型も設定されている。
※マネーポスト2016年新春号