「親から莫大な遺産を受け継いだんだろう」「株で大儲けしたのか」「宝くじでも当たったんじゃないの?」……などなど、お金持ちの人に会うと、あれこれとそうなれた理由を詮索する人がいる。しかし、「多くのお金持ちは、いきなりドンとお金持ちになったわけではなく、当たり前のことをコツコツ積み上げて大きな富を築いている。決して運がよかっただけではありません」と指摘するのは、これまで数多くの資産家と接してきたファイナンシャル・プランナーの藤川太氏(家計の見直し相談センター・代表)だ。藤川氏がその真意を解説する。
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そもそもほとんどの人は、ある日突然、お金持ちになれるわけではありません。たとえば相続や死亡保険金、退職金などで一時的に大金を手に入れる機会があるかもしれませんが、それらは一度使ったらおしまいです。本当のお金持ちになりたければ、手っ取り早く「お金」そのものを手に入れようとするのではなく、お金を増やしていける「知恵」を身に着ける必要があります。そうすれば、手にした大金をさらに増やすことも十分可能でしょう。
その重要性について、古代都市バビロン一の大富豪であるアルカドを中心に蓄財や資産運用の教訓がちりばめられた世界的名著『バビロンの大富豪』(ジョージ・S・クレイソン著)から読み解くことができます。同書の中で、「お前は運がよかったから大富豪になれた」と旧友にいわれたアルカドが次のように反論しています。
〈私の運がよかったからだって? 冗談じゃない。何年も魚の習性を研究し、風向きがどんなに変わっても適切に対応できる術を学んだ漁師は、いつだって魚の群れのいるところに網を投げ、豊漁を喜ぶことができる。それをお前たちは運がいいというのか。“幸運の女神”は傲慢だ。準備を怠った者なんて相手にもしない〉(藤川氏・監修『大富豪が教える成功法則』より)