高収入世帯が数多く暮らす港区麻布界隈。そびえ建つ高級マンションは、もちろん最新設備を備えている。そこに住む「麻布妻」たちは、マンションの最新設備をマウンティングの材料にすることもある。夫は外資系金融勤務で年収数千万円、1歳の子供を持つアラサー美人主婦ライターで「麻布妻」の1人である高木希美氏がリポートする。
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以前この地区のマンションに住んでいた香織さん(仮名、以下同じ)という方が久しぶりに遊びに来るというので、亜紀さんのお家でランチをすることになりました。私も香織さんが引っ越しする前に何回か会ったことがあり、呼ばれました。食事は料理の宅配サービス「Uber Eats」でデリバリーを頼めば気軽なので、そうすることにしました。
香織さんは「そっか、Uber Eats頼めるんだね、うちの地区ないかも~」と珍しそうです。
亜紀さんは顔色ひとつ変えず、こんなキツいセリフを言います。
「香織さん都落ちだもんね~。せっかく麻布に住んでたのに、いま横浜のほうでしょ? 綱島のほうだっけ?」
「都落ち?」
「え? やだ、知らなかった? 都心から田舎に行くの都落ちって言うんだよ? 調べてみてよ」
綱島は子育て世帯にも人気エリアなのに、田舎扱いとは酷い話です。でも、亜紀さんはすごく楽しそうにしています。食事がデリバリーされるまでの間、港区の子育て環境がいかに素晴らしいか、滔々と話し始めました。
対して香織さんは言います。
「けど、都心って人が多くて、特にこの辺って若い人が多いし、子連れで嫌な顔されることがあったんですけど、今の場所はそういうのあんまりなくて親切かも。
電車に乗れば武蔵小杉にモールもあるし、横浜も近いし、アンパンマンミュージアムも近いから、すごいそこで楽しめているんです。港区界隈で子連れだと、人のギスギス感を感じちゃってたからストレスは減ったんですよね」
亜紀さんは身を乗り出します。
「香織さん、もともと車乗らないしね。電車って、大変そうだよね。で、今はどんなマンションに住んでるの? マンション名は? 私物件調べるの大好きなんだよね」
「いやぁ、今住んでるところ全然。ディスポーザーもついてないし」
「浴室暖房とか床暖は?」
「ついてないです」
「最悪だね! 子供風邪引いちゃうじゃん。とはいっても、うち冬場は浴室暖房しすぎて、床暖も付けっぱなしだから電気代もガス代もすごいことになってるから、光熱費かからなくっていいかもね。うちは光熱費大変なの~。あと、この前ディスポーザー詰まって、コンシェルジュ呼んだんだけど、そんな心配もなくていいんじゃない?」