今回問題になった違法取引であるが、2017年3月に総額11億9000万ドルの罰金(8億9200万ドル、さらに違反があれば3億ドルの追加)を支払うことで同意している。8億9200万ドルについては2016年12月決算で費用処理が済んでおり、そのためにこの期は赤字決算となっている。
今回は、新たに違法な輸出が見つかったというわけではなく、幹部社員4人を解雇し、他の社員35人についても処分を行うという約束を、一部守らなかったことが要因である。ロス商務長官は「中興通訊は米国政府に虚偽の陳述をし、執行猶予期間中、保護観察中にも虚偽の陳述をした」と強く非難している。しかし、この程度のことはずいぶん前から分かっていたことで、処分が先にあって、後で理由を探したといった感が否めない。
同社にとって、イランや北朝鮮との取引は収益的にはほとんど意味のない取引である。内部できちんと管理できていなかったことが問題である。その後、社員の処分についても甘かったと言わざるを得ない。残念ながら、同社にとって些細な問題であっても、アメリカ政府にとってはそうではない。また、ルールや約束に対する米中の考え方の差が出たともいえよう。
中国ハイテク産業の最大の弱点は中核部品である半導体を海外、特にアメリカに大きく依存していることである。例えば、サーバー、パソコンのMPUは100%海外から供給を受けている。メモリーについても、DRAM、NAND FLASHは100%輸入である。テレビ用半導体の自給率もほぼゼロに近い。スマホ用の半導体では、Application Processor、Communication Processorなどでは一部、国内生産があるといった程度ある。
アメリカの今回の対応は、国家が全面的に支援する形でハイテク産業の育成・発展を図る戦略である「中国製造2025計画」に対する警告の意味合いが強い。
現在は、通信設備メーカーへの個別制裁といった形ではあるが、理由は何とでもなる。広範な中国企業に対して半導体を売らないという制裁を行うとすれば、中国のハイテク産業は大きな打撃を受けることになるだろう。