2016年からNISA(少額投資非課税制度)大幅に拡充される。投資枠が現行の年間100万円から120万円に増額されるのに加え、19歳以下の未成年者のための「ジュニアNISA」の制度が新設される。
同じNISAと銘打っていても、ジュニアNISAは現行の大人の制度とは異なる点が多い。対象となるのは0歳から19歳で、投資可能な枠は一人当たり年間80万円だ。非課税投資が可能な期間は大人と同じ5年で、一人当たり最大400万円を投じることができる。投資対象は大人と同様に株式や投資信託となる。
最大の相違点は、払い出し制限があることである。大人の場合は口座内で投資した金融商品はいつでも売却し、現金として引き出すことができるのに対し、ジュニアNISAでは売却は可能だが、資金は高校3年生の12月までは口座においておく必要がある。
それより前の引き出しができないわけではないが、この場合は利益に課税されることになり、NISAの恩恵が受けられない。資金が事実上拘束される期間は子どもの年齢が小さいほど長くなり、生まれたばかりの赤ちゃんにいたっては18年も引き出せないという事態にもなりうる。
子どもの進学資金と決めているなら必ずしもデメリットとはいえないが、利益確定や損切りをしてしまうと、再投資もできないまま資金を長期間眠らせておくことにもなりかねないので、慎重に活用の計画を立てる必要があるだろう。
ジュニアNISAは投資資金の拠出が祖父母や第三者にも認められているため、15年から増税となった相続税の節税対策としても注目される。
これまでは教育資金を1500万円まで非課税で贈与できる「教育資金の一括贈与に係る贈与税の非課税措置」、いわゆる教育資金贈与が祖父母世代の相続税対策の目玉だったが、ジュニアNISAを活用すれば暦年贈与(年間110万円以下なら贈与税が非課税となる制度)と併用してより手軽に相続税対策が可能になる。子育て世代にとっても、わが子のジュニアNISAは親に相続税対策や贈与の意思の有無を確認する良いきっかけになるだろう。
現行制度の増額とジュニアNISAの新設により、家族単位で考えると非課税投資ができる枠は大きく増えることになる。たとえば、両親と子ども2人の4人家族のケースでは、1年で400万円、総額で最大2000万円の非課税投資ができることになる。
現行制度ではNISAは特別な投資枠として長期投資や配当狙いなど目的を絞って活用する例が多かっただろうが、ここまで枠が増えればかなり自由な投資ができるはずだ。家族単位でどのように活用していくか、計画しておく必要があるだろう。その際は、長期間にわたり引き出しが制限される子どもの枠と、自由度が高い大人の枠に分けて投資スタンスを検討したい。
■文/森田悦子(ファイナンシャルプランナー・ライター)
※マネーポスト2016年新春号