「会場には市や区の施設が利用されることが多いです。100席前後のキャパでも1回の使用料が1万円くらいで済むケースもあると聞きます。そこで、1組あたり数千円の出演料で30組ほど出演させ、当然、来場者からも入場料を取ります。大雑把に売り上げを計算しても『芸人の出演料2000円×30組=6万円に加え、お客さんの入場料1000円×30人来場=3万円』となり、施設料を払ったとしてもいいお小遣い稼ぎになっているのではないでしょうか。中には1人で月に5~6回もライブを主催している人もいます」
ライブプロデューサー側としても、せっかくライブを主催しても入場者が集まらなければ赤字になってしまううえ、評判が悪ければ次回開催が危ぶまれるというリスクもあるだろう。そもそも芸人が参加してくれなければ、ライブ自体が成り立たないはずだ。
そう考えると、なぜ芸人側も苦しい生活の中でわざわざお金を払ってまでライブに出演するのだろうか……。
「本当に駆け出しの数年は、事務所主催のライブにさえも出演できない時期があります。自分は絶対に売れると思ってこの世界に入ったわけですから、ライブにさえ出られれば自分の実力を評価してもらえるのでは……と思ってしまうのです。だから、お金を払ってでもライブに出たいと考える。そんな芸人は山ほどいますよ」
少しでも多くステージに立ちたい、でも生活は苦しいままで、そこから抜け出せない……。そんな自分たちからお金を取っている人に怒りの矛先が向かってしまうわけだ。Aさんの言葉からは、貧乏スパイラルから抜け出せない、売れない芸人ならではのジレンマも垣間見えたような気がした。