「攻め」と「守り」も難しい状態でどう備えるか
生命保険や損害保険に加入して万一に備えるという方法も考えられるが、介護・暮らしジャーナリストの太田差惠子氏は否定的だ。
「基本的に保険は“収入が多く、かつ失うものが大きい人にとって有利な商品”として設計される。収入アップの手段が限られる世代が、預貯金を取り崩してまで保険に入るのは得策ではありません。保険料の支払いが老後資金を目減りさせるという本末転倒の結果になりかねません」
攻め(貯蓄・収入アップ)も、守り(保険加入)も難しいなら、どう備えればいいのか。太田氏は“対症療法”を把握することが大切と指摘する。
「高齢者を対象とする公的な助成や補助は数多い。近年の高齢者優遇批判の中で縮小傾向にあるものの、現役世代に比べれば充実しています。ただし、それらの制度は自動的に適用されるわけではなく、大半は申請が前提です。逆にいえば、そうした制度を知っていれば、想定外の出来事が起きた際に金銭的被害を軽減できる可能性が高まります」
さらにいえば「万が一」の事態に接した時に、どの程度の損失が生じるかを予測することも重要だ。
「慌てて間違った対策を施して、損害をさらに膨らませてしまうパターンは珍しくありません。精神的ショックが大きいからといって、金銭的損害も同様に大きいとは限らない。老後資産を守るという意味においては、生じた損失を冷静に判断する必要があります」(同前)
※週刊ポスト2018年5月18日号