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カリスマコンサルタント タクシーの良質顧客はバス停にいる

気鋭のマーケティングコンサルタントとして知られる船ヶ山哲氏が、待望の新刊を出した。前著『売り込まずにお客が殺到するネット集客法』では、Webプロモーションの具体的なノウハウを紹介し、大きな反響を呼んだ。今回の新刊『大富豪から学んだ世界最強の儲かる教え 世界で活躍するカリスマコンサルタントが明かす大富豪の50の知恵』では、さまざまなエピソードやノウハウをストーリー仕立てにして展開。楽しみながら読み進められるようになっている。

インターネットビジネスを行なっている企業はもちろん、これからWebプロモーションの導入を考えている企業、さらに、副業としてインターネットビジネスを始めようとしているビジネスマンには、うってつけの一冊となっている。船ヶ山氏のコンサルティングの一端を誌上で紹介しよう。(「」内は船ヶ山氏)

『売り込まずにお客が殺到するネット集客法』の冒頭で、印象的なくだりがある。「インターネットを活用して集客をします」という営業電話がかかってきた、という話だ。船ケ山氏は、ネットを使った集客ビジネスをしているにもかかわらず、電話で営業をしている矛盾を指摘している。

「事業が上手くいっていないことを、自分で宣伝しているようなものですよね(笑)。テレアポに限った話ではないんですが、ネットサービスを扱うSEO(検索エンジン最適化)対策を行なう業者や、ホームページを作成する業者は、SEOやホームページの作成はできるのですが、ネットを使った集客のノウハウは知りません。したがって、SEO対策が上手くいき、キーワード検索で上位になったとしても、実際の集客に結び付くとは限らないのです」

船ヶ山氏は、まずWebマスターとして経験を積み、数多くの成功を導き出した。そして、より多くの企業のプロモーションやマーケティングを手がけるために、コンサルタントとして独立した。

「SEOなどのテクニックも大切な要素ですが、やはり、実際に集客し、事業で成果を出すためには、そもそも人がモノを買う行為とは、どんなことなのかといった、ビジネスの本質を理解する必要があります。それが分からないと、事業はスタートから失敗することになります」

――ずばり、ビジネスの本質とは何なのか?

「価値の交換だといえるでしょう。相手が価値があると思っているモノをこちらが提供し、その代わりに、こちらが価値があると思っているモノを相手から提供してもらう─こうした価値の交換によってビジネスが成立しているのです。

この本質においては、お金さえ介在する必要はありません。通貨や紙幣といったお金は、交換を行なう際のツールにしか過ぎないからです。自分が欲しいものが明確になっていて、相手の欲しいものも明確になっている。それが交換できれば、お金をはさむ必要はないのです」

――それが現実のビジネスとどう結びつくのか?

「まず、事業をスタートするにあたって考えるべきことは、相手となる顧客が、何を欲しがっているのかを理解することです。一見、あたりまえに聞こえるかもしれませんが、現実のビジネスでは普通のことではありません。

よく見かけるのが、売る商品のことを考え過ぎてしまうこと。商品の機能や効能、デザインにしか興味を持たず、良い商品にしようと、とことん追求する。その結果はどうなるか。必ず売れるはずだと、商品に過大な自信を持ってしまう。

売れなかった場合は、その理由を客に押し付けてしまう人さえいるでしょう。商品の良さを理解しない客が悪い、といった風に。こうなると、お客はどこにもいなくなってしまいます。相手が何を欲しがっているのかを考えるのがビジネスなので、完全な本末転倒でしょう。こうしたケースは本当によく見ます」

――では、欲しいモノを考える上で、何を糸口にしたらよいのだろうか。

「それは感情です。モノを買うという行為を含めて、日常生活においては、人は感情に支配されています。価値は感情が決めています。例えば、飛行機の座席は、エコノミークラス、ビジネスクラス、ファーストクラスに分かれていますよね。エコノミークラスとファーストクラスの料金は、10倍くらい違うこともあります。

しかし、実質的に、ファーストクラスには、エコノミークラスの10倍の価値があると思いますか? たしかに、座席は広いですし、食事のメニューやドリンクも違います。キャビンアテンダントが、こちらの名前を呼んで、挨拶をしてくれるサービスも付いています(笑)。しかし、その原価を考えると、エコノミークラスの価値の10倍あるとは到底思えません。

じゃあ、なぜファーストクラスに乗る人がいるのか。ファーストクラスのサービスが、顧客の欲望を満たし、良い気分にさせているからです。相手のして欲しいことをしてあげれば、喜んでお金を支払ってくれるのです」

そこにビジネスの重要なノウハウがあると船ヶ山氏は言う。

「自社の商品やサービスの価格を付けるときに、ほとんどの人は、なるべく競合他社が提供している価格よりも、低い価格を付けることを考えます。製造・販売コストが抑えられれば、低い価格で勝負するでしょう。シェアをとってしまえば、有利に戦えるからです。

しかし、それでは、いつのまにか価格競争に巻き込まれて、その商品・サービスのマーケットでは、全員が赤字になる、といった事態になる可能性もありえます。もし、提供する商品・サービスの市場平均価格が5万円で、最も高い価格設定が10万円だったとすると、私は間違いなく、10万円で売ろうとします。

なぜ、10万円でも売れているのか、どんなお客さんが買っているのかを分析して、顧客を奪うことを考えるでしょう。顧客の感情を読み、何を欲しがっているのかを考えることができれば、こうしたビジネスのやり方が正解になるのです」

「顧客の感情を考える上で、シチュエーションは極めて重要です。シチュエーションによって、感情が左右されるからです。したがって、こちらが望む顧客はどこにいるのかを考えるマーケティングが大事になってくるのです。

1つだけわかりやすい例を挙げましょう。私の住んでいるマレーシアでは、よく、駅前とかホテルの前に、タクシーが行列をしています。お客がいないときは、かなりの時間を浪費することになります。お客が来ても、行く先は近場で済んでしまうことが多いはず。

私がドライバーなら、決して行列に並ぶことはないでしょう。実は、タクシーの良質な顧客はバス停のバスを待っている人の中にいます。都心のバスは、道路が渋滞しがちなので、早朝から夕方まで、時間通りにはなかなか来ません。イライラしている人は多いでしょう。そんなところにタクシーがあれば、乗る人が出てきます。みなさんも、思わず乗ってしまった経験はありませんか?

バスで移動しようとしていた人であれば、そこそこの距離を移動するはずです。行きたい場所に時間通りに行けない損失が、10倍以上のタクシー代にかわるわけです。これは分かりやすい例ですが、大事なことは、相手の感情を読む、どこの客がいるのかを考える、といった“考える”ことなのです。その考え方をアドバイスするのが、私の仕事だと思っています」

インタビュー中、船ヶ山氏は、よく「再現性」という言葉を使う。「再現性がある」とは、ある理論に基づいた行為をすれば、同じ結果が得られる、ということだ。コンサルティング成果が出なかった場合、「ケースバイケース」という言葉で済まされてしまうことも多い。しかし、船ヶ山氏は、それではコンサルタントとして失格だという。

「どんな状況であれ、一定の成果を導き出せないということは、そのアドバイスが理論的に確立していないと考えられます。きちんとした再現性のあるアドバイスをするのが、コンサルタントの役目ではないでしょうか」

※マネーポスト2016年新春号

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