この4月、政府は75歳以上の後期高齢者が病院の窓口で支払う医療費の自己負担を一挙に2倍(1割から2割)に引き上げる方針を打ち出した。人口が多い団塊世代が後期高齢者になる前に値上げし、75歳になっても医療費を下げない仕組みをつくろうという政策だ。
団塊世代は年金60歳支給で他の世代からは恵まれているように見えても、医療費では負担増のターゲットにされて「損する世代」になるのだ。
「教育」「就職」「出世」「住宅」「結婚」などの面でも世代によって恵まれていたかどうかの環境は違う。
新人類と団塊ジュニアに挟まれたバブル世代(1965~70年生まれ)は好況期に青春を謳歌して就職状況も恵まれていたから、就職氷河期に直面した団塊ジュニアからは「勝ち組」と思われている。
本当にそうなのか。「損した世代」と「得した世代」は政策の失敗とつじつま合わせでそう思わされていることが少なくない。アベノミクスの金融政策や女性活躍社会、働き方改革、税制が少し変わるだけで世代の損得は入れ替わる。
だから、世代間で反目し合えば本質を見失う。重要なのは、少子高齢化で社会の矛盾がどんどん広がる中、政治家が次にどこに世代間の損得の境界線をつくり出そうとしているかを見抜いて備えることだ。
※週刊ポスト2018年5月25日号