しかし、「マイホーム神話」は終焉を告げた。住宅ジャーナリストの山下和之氏が指摘する。
「埼玉や千葉などの郊外に団塊世代が購入した3000万~4000万円ほどの一般的なマイホームは、価格を抑えるために現在と比べれば手狭で安普請な物件が多く、老後も住み続けるならリフォームが必要ですが、かなりの資金が必要となる。しかもマンションの場合、リフォームしようとしても管理組合の許可が必要になります」
困るのは夢のはずのマイホームが老後の暮らしにとって、ますます「不良債権」となることだ。
「郊外の住宅地は高齢化と人口減少で空き家が増加中で、ゴーストタウンとなる怖れもあり、持ち家の資産価値は下がる一方です。子供がいても住むのを嫌がるでしょうし、売却して引っ越そうにもなかなか売れません」(山下氏)
長時間の通勤地獄に苦しみながら額に汗して働き、念願のマイホームを手に入れて、ようやくすごろくを「あがった」はずが、老後に思わぬ落とし穴が待っていた――つくづく団塊とは報われない世代である。
一方でバブル世代や団塊ジュニア世代は「お買い得」の物件が多かった。
「2000年に『住宅の品質確保の促進等に関する法律』が施行されて、すべての新築住宅は10年間品質保証することが義務化されたため、住宅の品質が飛躍的に向上しました。しかもこの時期はバブルが崩壊して、都心の住宅価格もローン金利も下落した。このタイミングでマイホームを買ったバブル世代や団塊ジュニア世代は、安くて品質のいい物件を手に入れました」(山下氏)
今後は人口減により住宅需要が減少し、マイホームはますます「買い手市場」になるとされる。
※週刊ポスト2018年5月25日号