台湾系企業が中国本土資本市場に上場する。鴻海精密工業の主要傘下企業の一つでアップルのiPhoneの組み立てなどを行う富士康工業互聯網(フォックスコン・インダストリアル・インターネット。601138)は5月24日、本土A株市場で公募を行った。発行価格は13.77元/株(234円相当、1元=17円で換算、以下同様)。PER(株価収益率)は2018年12月期予想利益に対して17倍で、本土A株メインボード上場にしてはほぼ上限である。発行株数は19億7000万株。調達額は271億2700万元(4612億円相当)に達する。28日には当選者が発表されているが、上場は6月にずれ込む見通しである(現時点では正式な上場日はまだ決まっていない)。
インターネットを通じた主に個人投資家向けの公募は10億600万株で全体の51.1%を占める。当選確率は0.34%であった。本土A株市場のIPO価格は当局によって、低く抑えられており、通常、上場後、ストップ高が数回続く。そうした実情があるので一般的に当選確率は1%に遠く及ばない。0.34%といった確率は高い方だ。ただ、発行規模はここ2年で最大となるだけに、それでも1%に満たないのだから、本土の資本市場は十分な厚みがあると言えよう。
注目すべき点は、証券会社の営業を通じた従来型の公募の方であり、特に戦略投資家として、中国を代表する20機関が参加している点である。戦略投資家への割り当ては5億9100万株で全体の30%に当たる。
具体的には、国家の投資運用部門(SWF)、全国社会保障基金理事会や、中国鉄路、招商局、中国中車、第一汽車、鞍鋼集団、中国華融資産管理といった中央系国有企業、中央系国有投資集団などが戦略投資家として名を連ねている。さらに、インターネット大手である百度、アリババ、テンセント(通称「BAT」)が資本参加している。
これだけ多くの国家部門が台湾企業の戦略投資家になっているのだから、中国政府は、中台の政治的な関係と民間の経済活動を完全に分けて考えていると言えよう。少しうがった見方をすれば、台湾を代表する企業である鴻海精密工業の傘下企業に中央系国有企業が資本参加することで、台湾経済を取り込もうとしているとも見て取れる。