行列ができるラーメン屋を見たり、ラーメンのチェーン店が続々と勢力を拡大している様を見ると「ラーメン屋って儲かるのか……」という幻想を抱かせる。ラーメンの食べ歩きを趣味としていた人物が、自分にもできそうだと考え脱サラ・自己流で開店するケースもある。
しかしながら、そうした店に閑古鳥が鳴き続け、閉店に追い込まれるといったエピソードもラーメン業界ではよく聞かれる。飲食店.COMの2015年の記事には「閉店したラーメン店、4割がオープンから1年以内に営業終了。飲食店で閉店しやすい業態とは?」というものがある。同記事に添付されたグラフを見ると約72%のラーメン屋が3年以内、約85%が6年以内に廃業している。
それなら、資本が安定したチェーンのフランチャイズ店に参加し、ノウハウと食材を提供してもらう形で運営すればいいと思うかもしれないが、独立店には独立店なりのこだわりがあるようだ。スープの味が評判の東京都内のラーメン店店主・A氏は苦い顔をする。
「私のように名店と呼ばれる店で何年も修業し、ようやく独立した人間からすれば、チェーン店の“工場スープ”を使わざるを得ない人はラーメン作りのセンスがないと思う。ラーメンのスープというものは材料や配合もさることながら、材料や水の足し方なども含め、センスが必要とされます。残ったスープの味を見て、豚骨や野菜などの分量を変えてできるだけ毎日同じ味のスープを作る。そこには決まった量はありません。配合、どこで材料を取り出すかなどの職人技はセンスがなくてはできないのです。私は、工場スープを使う人は“職人”ではなく“作業員”と考えています」(A氏。以下同)