いくら遺産相続対策を学んでも、実際に役立てるには親や兄妹と話し合わなければ意味がない。しかし、「家族で話し合う」というただそれだけのことが、相続となると途端に難しくなる。親、兄妹、その他の親族、さまざまな立場の思惑や心情、そして打算が絡み合うからだ。
スムーズに進むのは、親(被相続人のこと。以下同)が「家族会議を開こう」と子供(相続人のこと。以下同)に伝えるパターンだという。
子供たちは家族会議を開きたいと考えていても、自分が発案者になると、「あいつは有利にことを運ぼうとしている」などと、あらぬ疑いをかけられかねないからだ。「親が自分の意思で家族を招集した」という形式が理想である。
「子供の誰かから言われると角が立つ場合がありますが、『親が言うなら……』と納得する息子さん、娘さんは実際に多いようです」(まこと法律事務所代表・北村真一弁護士)
しかし、親にそのつもりがない場合は、説得する必要がある。最初から遺産分割の話をするのではなく、「仏壇や墓の管理をどうする?」などと持ちかけると、親も「実はそれは自分も気になっていた」と反応することもある。それでダメなら、遺産相続で家族関係が崩壊した例などを話し、必要性を訴える。
「『遺産が気になる』から話をするのではなく、『後に兄妹で揉めることが心配だから、話し合っておきたい』という姿勢を見せることが重要です」(北村氏)