「納得して死ぬ」ということ
「存在感」、「生きがい」、「仕事」、「やりがい」、「役割」、「家族」、「友人」、「若い世代との交流」など、定年後の人生を幸せにするキーワードは数多くある。
では、老後生活を満足して締めくくるにあたって最も大切なことは、何なのだろうか。作家の曽野綾子氏は夫の三浦朱門氏が亡くなった後、猫を2匹飼い、それらの世話をすることが自らの「責任」だと感じるようになった。『納得して死ぬという人間の務めについて』(KADOKAWA)の最後にこう記す。
〈一つ屋根の下にある生命の今夜を、私のできる範囲で幸福にすることが、私が「納得して死ぬ」ために自らに課した、目下の務めなのである〉
どんなに些細なことでもいいので自らに課した“責任”を背負って生き切ることが、定年後の人生にハリを与え、納得して死ねることにつながる。もしかしたらそれは“死”という人生最後の局面で“勝つ”ための秘訣になるのかもしれない。
※週刊ポスト2018年6月15日号