現在の年金支給開始は原則65歳だが、受給開始年齢を60歳から70歳の間で自由に選べる制度となっている。しかし、政府は、受給開始を80歳程度まで繰り下げられる制度改革に着手している。その改革に対して、経済アナリストの森永卓郎氏は、「年金受給開始を原則70歳へと繰り延べる布石に他ならない」と、次のように指摘する。
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政府はすでに、「一億総活躍社会」というキャッチフレーズのもと、「みんな70歳まで働け」という方針を水面下で確実に推進している。
その動きは以前から見られた。たとえば、2014年に行なわれた公的年金の将来見通しを試算した厚生労働省の財政検証だ。
この推計では、労働市場への参加が進むケースとして、2030年の65~69歳男性の労働力率が67%に設定されている。そうなれば、現行水準並みの年金給付が維持できるというのが、推計の結論だ。つまり、3分の2の男性が70歳まで働き続けることが、年金制度の崩壊を防ぐための絶対条件なのだ。
そうした状況を踏まえると、政府が考えている年金改革の方向性が見えてくる。2020年の東京オリンピックまでに65歳まで働く世の中に短期間で持っていき、その後、10年程度で一気に70歳までの継続就業社会を完成させる。それができた時点で、年金の受給開始年齢を70歳に引き下げるのだ。