ただ、体に鞭打って70歳まで働き続け、その段階で年金をもらい始めるということをスタンダードにしていいのだろうか。伸びたとはいえ、現在の男性の健康寿命は72歳だ。つまり、このまま政府の目論見通りに進めば、70歳まで働いてようやく定年を迎え、これから悠々自適の老後が送れると思っても、わずか2年後には介護施設で面倒を見てもらう生活になってしまう人が大半となる。そんな人生で本当に幸せなのだろうか。
各自の人生観にもよるが、年金受給開始年齢が原則70歳になったとしても、たとえば60歳とか65歳で会社を辞めて、年金の繰り上げ受給を選択するという選択肢も十分アリだろう。私は、かえってその方が充実した老後が送れるはずだと考えている。もちろん、繰り上げ受給を受ければ給付額は減額となる。だが、年金が少なくても生活を徹底的にリストラすれば、何とか暮らしていくことは可能ではないだろうか。
東京都心に住んでいたら難しいかもしれないが、郊外に住めば住居費を劇的に安くすることも可能だ。家賃なら3分の1以下になるところもあるだろう。賃貸でなくとも、地方に行けば、都心に比べて格安の値段で家を買うことが可能になる。たとえば、群馬県の県庁所在地である前橋市の土地は、坪単価10万円程度で買えるところもある。しかも、物価も安い。そういう場所に移り住めば、年金が少なくても豊かに暮らすことができるのではないだろうか。
そうした策を講じた上で、自分の趣味を生かしたような好きな仕事をして少ない年金を補えるぐらい稼いで、楽しく暮らす。そうした生活スタイルこそ、スタンダードにすべきなのだ。