港区麻布界隈に住む、セレブな「麻布妻」たち。麻布近隣にはおいしい店も多く、デリバリーも充実している。それだけに「料理をしない妻」も少なくないという。麻布妻でライターの高木希美氏は、その1人から「夕食作るの? かわいそう~」と言われた挙げ句……高木氏が驚きの体験をリポートする。
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新宿・伊勢丹の食品売り場で、明日香さん(仮名。以下同じ)に偶然会いました。明日香さんは以前、恵比寿の近くにあるママヨガのクラスで何回か会ったことがあり、ランチもした仲です。麻布界隈に住む私たちが伊勢丹で会うなんて、びっくりです。
「あれ? 希美さん? 伊勢丹で会うなんてね。何してるの?」
「買い物ついでに夕飯の材料を買おうかなって」
すると、明日香さんは目を見開いて言います。
「え? 夕飯作ってんの? やーだ! 子育て中だよ、私たち? 夕飯なんて作る? やだやだちょっと、やめてよ。かわいそう~」
本気で驚いています。麻布妻の中には時々いるのです、「私、キッチンになんて立ちません」という人が。では伊勢丹の食品売り場に何をしに来ているのでしょう?
「私はさ、息子がイチゴ大好きすぎるんだけど、伊勢丹のイチゴしか食べないの。だからイチゴ買いに来ただけなんだけど」
中には1粒で数百円というイチゴも並んでいます。その高級イチゴを箱買いする明日香さん。夕飯を作らないならどうしているのかと聞くと、
「週1回は、家事代行サービスの人が掃除と一緒に作るんだけど、他は外食。でも、今日は旦那もいないし、うちの近所の外食も飽きたからどうしようかなー。新宿で食べていこうかなー」
明日香さんはうちのすぐ近くのマンションに住んでいます。
「よかったらうち、今日ビーフシチュー作るなんですけど、食べますか? 主人は家で食べるけど夜遅いので」
「え? それ嬉しいかも! じゃあうちにあるお菓子と物々交換しましょう!」
帰りはタクシーで、「なんで毎日自炊なんて面倒なことをするのか」「自炊なんて究極の時間の無駄」「作るのは月に1度あるかないか」「私たちは子育てが仕事」だという話をたくさん聞かされました。そして、食事を作らない麻布妻の定番文句。「手が荒れるし」。