定年退職した後は、現役時代以上に「税金」の存在を気にしたほうがいいと元国税調査官でベストセラー『やってはいけない老後対策』著者の大村大次郎氏は指摘する。税金を「徴収する側」に長くいた大村氏は、なぜその点を強調するのだろうか。
例えば年金と並んで老後資金の柱となる退職金。その受け取り方は大きく分けて「分割」と「一括」の2パターンあるが、大村氏は「税金面を考えると一括が圧倒的に有利」と断言する。
「退職金を一括でもらえば『退職所得控除』が適用されて、ほとんどの場合は所得税を払う必要がありません。大卒後、定年まで38年間働いた人なら、最大2060万円まで税金がかからない。
一方の分割は、月々の受け取りが『月収』扱いとなって課税され、サラリーマンの源泉徴収と同様に天引きされた金額が振り込まれます。“手取り”の額は、一括のほうが大きくなると覚えておきましょう」(以下「」内は大村氏)
また、長年勤めた会社を退職する際には「税金の還付漏れ」という落とし穴もある。
「多くの人は『退職時の税金の手続きは勤務先がやってくれる』と思い込んで、失敗しがちです。とくに注意すべきは勤務先が『退職年の給料の税金』の手続きを怠っているケース。通常、サラリーマンは払い過ぎた源泉徴収を年末調整で取り返しますが、退職したことで年末調整が受けられず、多く払った税金が還付されないままになっていることが多い」