逆に、大村氏が「やってはいけない投資」の代表格として挙げるのが、不動産投資だ。
「歴史的な低金利もあり、“銀行預金で寝かせるなら不動産に投資して定期的な賃貸収入を”とのセールストークが盛んですが、オイシイ話を鵜呑みにしてはなりません。なかでもリスクが大きいのが、『サブリース』という取引です。家主が不動産業者に貸した建物を、不動産業者が入居者に貸し出し、入居者が払う家賃から手数料を引いて家主に渡す方法。要は『又貸し』です。トラブルが多発しています」
大村氏は、定年退職後、親から相続した土地の固定資産税に悩んでいたA氏のケースを挙げて説明する。
A氏は、不動産業者の「30年一括借り上げ、月額70万円支払い」との文句に乗り、銀行から7000万円を借りてアパートを建てた。毎月のローン返済は30万強だが、月70万円の家賃収入で黒字経営が続いた。
「ところが10年後に、業者がいきなり支払い月額の4割カットを通告してきました。つまり、月額の収入が70万円から42万円に減ってしまったのです。B氏が慌てて契約書を読み返すと、『10年後からは2年ごとに家賃を見直す』と小さな文字で書かれていた。家賃収入カットに老朽化した建物の補修費がかさみ、A氏の収支は一気に赤字に転落。ローン返済のために親譲りの土地を売却せざるを得なくなりました」
増やすつもりが大きく減らしてしまう──これこそ「やってはいけない老後対策」の典型である。
※週刊ポスト2018年6月22日号