TCMB(トルコ中銀)は6月7日の定例会合で、1.25%の利上げを決定。政策金利である1週間物レポ金利を16.50%から17.75%に引き上げました。本稿では、利上げの背景、そしてトルコリラの今後について考察します。
2週間で計4.25%の利上げ
TCMBは5月23日の臨時会合で3%の緊急利上げを実施しており、6月7日の利上げによって、政策金利はわずか2週間で4.25%引き上げられました(13.50%から17.75%へ)。
トルコのインフレ率は、TCMB(トルコ中銀)のインフレ目標である+5%を大きく上回り続けています。CPI(消費者物価指数)上昇率は昨年8月以降、前年比で10%を超え続けており、先週(6月4日)発表された今年5月CPIは前年比+12.15%と、4月の+10.85%から上昇率が加速し、昨年11月以来の強い伸びを記録しました。また、トルコリラは今年に入ってから下落を続けており、5月には対米ドルや対ユーロ、対円で過去最安値を更新しました。
6月7日の利上げは、トルコリラが主要通貨に対して過去最安値圏に推移するなか、5月CPIでインフレ圧力のさらなる高まりが確認されたためと考えられます。
TCMBのインフレ抑制への決意や独立性が示される
インフレ圧力の高まりへの対応策として利上げが考えられます。ただ、エルドアン・トルコ大統領はTCMBに対して繰り返し利下げを要求。そのため、市場ではTCMBが利上げをするのは簡単ではないと見られていました。7日の利上げは、TCMBのインフレ抑制への決意を示すとともに、TCMBが政府から独立していることを示したと言えそうです。
トルコリラが持続的に上昇するには!?
TCMBの利上げを受けて、トルコリラは対米ドルや対円でいったん下げ止まりました。ただ、トルコリラ安の根本的な原因は解決していません。インフレ率は高く、また利上げを行ったにもかかわらず、TCMBの独立性をめぐる懸念は払しょくされていません。エルドアン大統領は5月14日、「大統領選と議会選に勝利した場合、自身が金融政策に対してより多くの責任を担うだろう」と語り、6月24日の大統領選後にTCMBの金融政策への関与を強めることを示唆しました。エルドアン大統領は今後、利下げ圧力を一段と強める可能性があります。その場合、トルコリラには再び下落圧力が加わりそうです。
トルコリラが持続的に上昇するには、(1)インフレ率が鈍化する。そうでなければTCMBは利上げを行う、(2)TCMBの独立性をめぐる懸念が払しょくされる、それらが必要と考えられます。
CPI上昇率は今後、これまでの原油高やトルコリラ安の影響によって一段と上振れる可能性があります。その場合、TCMBは利上げできるのか? そして、エルドアン大統領はTCMBの金融政策に介入せず、中銀の独立性を尊重することができるのか? TCMBの金融政策やエルドアン大統領の言動に注目です。
(マネースクエアシニアアナリスト 八代和也)