「社会のインフラは今のところ、電気、ガス、水道、通信ですが、これにいつか地域サービスが加わるような仕組みをつくりたい」と古市さんは意気込む。
昨年辺りから、講演会に呼ばれることも増えた。参加者は福祉関係者からビジネスマン、起業家までさまざま。古市さんはそこで御用聞きのノウハウを余すところなく伝えている。
5月24日に東京・文京区民センターで行われた「御用聞き地域包括ケア事例報告会」は、過去最高の180人が参加し大盛況だった。今回初めて後援した社会福祉法人・文京区社会福祉協議会の職員、根本真紀さんが語る。
「文京区は大学が多く、地域の活性化に学生の参画を望む声は多い。学生からの報告は地域のみなさんにとって、刺激になったのではないか」
参加者からも、「学生の生き生きした姿に感動した」「現行の制度では受け入れてもらえない人のために、新しい支援が必要だとわかった」といった称賛の声が相次いだ。
実際に御用聞きで有償ボランティアとして働く唐沢武尊さん(21才)は「洗濯機の脱水機が壊れて使えない」という困りごとで駆けつけたら、本来は下向きに排水溝へ入っているはずのホースが上向きになっていた。
「ぼくらからすれば簡単そうに見えても、お年寄りには気づきにくいちょっとした困りごとはたくさんあると気づかされた」(唐沢さん)
しかし、会社の規模がどれだけ大きくなろうとも、古市さんにとって、「社会課題の解決」という事業の原点は揺るがない。
昨年、御用聞きの力を借りて「ゴミ部屋」から脱出した都内在住の50代男性は「古市さんたちは、変わらないでほしい。彼らは普通の業者ではなく、社会の寄り添い人だと思う」と言う。