外国語教師や通訳など、ほかにも選択肢は多くあるようにも思えるが、なぜ陳さんはコンビニで働くことを選んだのだろうか。
「日本に来てすぐ、コンビニに行って買い物したとき、店員さんが優しくて親切で、すごくうれしくなったんです。だからワタシも、店員さんとして働いてみたらどうだろうと思って応募しました」
接客の丁寧さに加え、その便利さも魅力的だったという。
「中国のお店はものを売るだけ。でも日本のコンビニは、公共料金の支払いも、ゆうパックも、カフェも、たくさんサービスありますネ。すごい便利で、驚きます。実際に働くことになってからは覚えることが多くてタイヘンですが…(苦笑)」(陳さん)
「学校よりも日本語を勉強できている」
コンビニで働くようになってから、陳さんの日本語はめきめきと上達した。多種多様な商品やサービスを取り扱うことで語彙が増え、ひっきりなしに訪れるお客さんの相手をするため早口の日本語を聞いても怖気づくことなく、キーワードを拾って会話ができるようになった。
「学校よりも日本語を勉強できていると思います!(笑い)」
陳さんのような、コンビニで働く外国人留学生が今、急増している。とくに都市部ではその傾向が顕著だ。コンビニで働く外国人100人以上に取材してきた、『コンビニ外国人』(新潮新書)の著者、芹澤健介さんが言う。
「全国の大手コンビニで働く外国人店員は4万人超、実にスタッフ20人に1人の割合です」
都市部はさらにその割合が上がる。東京23区内の深夜帯に限れば、6~7割の店舗で外国人が働いており、昼間の時間帯でもスタッフ全員が外国人というケースも珍しくない。
「彼らの大半は語学留学生で、『対面でお客さんと話せる仕事だから、働きながら日本語や日本文化を勉強できる』と、自ら志願してコンビニで働いている。ある程度語彙力がないと働けないため、コンビニ店員をステータスだと語るスタッフも少なくありません。しかしその裏には深刻な人手不足があり、コンビニ業界としても彼らの労働力に頼らざるを得ないというのが実情です」
※女性セブン2018年7月5日号