ネパール人店員・ビノドさんは、自分が悪くないのに「モウシワケゴザイマセン」と言わなければならなかったことを思い出すと、今でも怒りがよみがえってくると振り返る。
「夜中、ホットスナックの中身を捨てて、ケースを洗っているときに酔っ払いの男性が急に店に入ってきて、『なんで揚げ物がないんだよ』とからまれた。だけど、ナイモノはナイ。それはボクの国では当たり前のこと。でもそれを言ったら、『客に向かってなんだその口の利き方はぁ!』って怒鳴られた。
それもビックリだけど、もっと驚いたのは、日本人の店長が飛んで来て、一生懸命頭を下げているんです。何も悪いことをしてないのになぜ謝るんだろうって、ずっと思っていました。そのあと店長から、『次回からはお客様の要望にお応えできるよう努力します』って言ってね、と注意された。そこまで客に気を遣わなきゃいけないのかな、自分たちのせいじゃないのに謝りすぎなんじゃないかな、とギモンに思いました」
“おもてなし精神”は観光客だけに向けられている?
1年前に母国・タイに帰国した元コンビニ店員のナルバディンさんが振り返る。
「日本のコンビニで働けたことは大きな勉強になりました。今、母国で飲食店をやっているのですが、子供のお客さんには同じ目線で話すとか、そこでの接客は、日本のコンビニで学んだことが生きている。ただ、傷ついたことも何度もある。
たとえば、深夜シフトに入る人がなかなかいなかったとき、自分も断ろうと思ったけど、それを言い出せなかった。店長の言葉もよくわからなかったし顔も怖かったから(苦笑)、断ったら、『きみのような留学生の代わりはいくらでもいる』と言われそうで…。
それから、レジを打つ作業が少し遅れただけで、お客さんから舌打ちされたこともあった。とくにサラリーマンのお客さんは忙しくて時間に余裕がないのか、基本的に無言だし、態度も威圧的で怖かった。もともとタイと同じ仏教の国だし、おもてなし精神がある親切な国のイメージを持っていて、旅行で来たときもイメージ通りだっただけにショックだった。
ああ、自分が外国人観光客だったらやさしくしてくれるのに、同じスタッフとなったら接し方が全然違う。なぜなんだろう…。がっかりしたり悲しくなったりしたことがありました」
※女性セブン2018年7月5日号