7月は相続税の税務調査の季節だ。国や地方公共団体の会計年度は4月~翌年3月だが、税務署の事業年度は、毎年7月から始まる。確定申告(2月~3月)に伴う膨大な会計処理があるからだ。
新事業年度に入り、7月10日が定期異動日となる。そこから早速、“マルサ”が動き出すことになる。
「○○税務署です。相続税の件でお宅にうかがいます」──それは「臨宅」と呼ばれる実地調査を通告する1本の電話から始まる。税務調査が来れば、8割以上の確率で申告漏れなどの非違行為が指摘され、延滞税や加算税を徴収される。
かつて相続税は資産家から取る「富裕税」だったが、2015年に施行された相続税法改正で課税対象者は2倍に増え、東京都内では相続件数の12%が課税対象になっている。いまや“庶民から取る税”になった。
相続税マルサの調査も、畳の裏に1万円札を何千万円も敷き詰めたり、仏壇に純金の仏像を隠した豪邸の住人だけが対象ではなく、マンションや小さな一戸建てにも容赦なく踏み込む。
つまり、ごく普通の家庭が対象となるのである。