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「相続税マルサ」は遺産額と税額、相続人の数もほぼ正確に把握

「税額ゼロ」と「申告義務なし」の違い

 では、そうした税務調査の対象はどのように選ばれるのか。

 国税庁のKSKシステム(国税総合管理システム)には、国民1人1人の過去の収入(所得)から、不動産の売買記録、株や債券などの金融取引まで膨大なデータが蓄積されている。そして死亡届が出されると、市町村から翌月までに所管の税務署に報告がなされる。その段階で、税務署は故人の遺産額と相続税額、そして相続人の数までほぼ正確に把握しているのだ。

 遺族は相続発生から10か月以内に相続税の申告をしなければならない。その間、税務調査員はキチンと申告がなされるか、遺産隠しがないかに目を光らせている。元国税調査官の税理士・武田秀和氏が語る。

「確定申告書は保存期間を過ぎると廃棄されますが、故人の所得や株や不動産取引などのデータはKSKシステムにずっと保存される。これは相続税を想定した運用です。例えば、データでは故人は5年前に不動産を1億円で売却しているが、遺族の相続税の申告には現預金がほとんどない。そういう場合、税務署は1億円を何に使ったのかを突き止める。そうして相続額を正確に試算していく。

 実地調査の対象は、相続税がかかるのに無申告だったり、申告はしていても、課税逃れの資産隠しの疑いが強い案件が選ばれるわけです」

 森友学園への国有地売却の行政記録を「1年間の保存期間が過ぎたから」とさっさと廃棄した財務省と同じ役所(国税庁は財務省の外局)とは思えない対応だが、本来、役所はこうあるべきなのだろう。

※週刊ポスト2018年7月6日号

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